テレビ視聴者
「ヤラセって度々問題になってるけど、なんでヤラセするの?
もうよくない?ヤラセとか古いよありのままを見せればいいのに」
こんな疑問を解決します。
・テレビ番組がどうやって作られているのか分かります。
なぜなら、僕は約10年間テレビ番組を作り続けてきたテレビディレクターだからです。 ※主にヤラセが起きるバラエティの
この記事では、ヤラセが起きる2つのポイントを解説して、テレビ番組が出来上がる過程と演出方法も説明します。
記事を読み終えると、ヤラセに対する疑問が解決しテレビ番組がどうやって出来上がるのか理解できます。
【ヤラセの前に】テレビ番組における役割
テレビは1番組当たり数千万円の予算が投入され作られています。
そこに関わる人数は1番組当たり約50人ほどになります。(ゴールデン番組だとこのくらい)
役職は大きく6つ
この内、実際に最後まで手足を動かしてオンエアまで責任を追うのが総合演出とディレクターです。
もちろん、プロデューサーやADもいますが、内容を担うのはこの2つのポジションになります。
企画内容はどうやって決まるのか?
企画内容はチーフ作家と総合演出で決めていく場合がほとんどです。#番組によってPの立場が強い場合もある
では、その発端となる企画はどうやって決まるのかというと、こんな感じです。
- 放送作家の宿題
- 会議でチーフ作家&総合演出が抽出
- 各ディレクターへネタ振り分け
- 取材
- 会議でプレゼン
- 不成立と判断された場合、別案出し
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そうしてネタが固まり、台本作成⇒ロケ⇒編集⇒チェック⇒オンエアとなります。
VTRを見る番組(サブ出し番組と言います)は、
台本作成⇒ロケ⇒編集⇒チェック⇒”スタジオ収録⇒編集⇒チェック”⇒オンエアと工程が増えるのでかなり手間が掛かっています。
ヤラセが起きる原因①:曖昧な評価基準
どんな業界にもつきものだと思いますが、テレビの面白い面白くないは個人の感覚値。
唯一の指針は視聴率。それもまた曖昧です。
1、誰が評価しているか
制作現場において評価しているのは、総合演出です。
番組の内容に関わるすべて、面白いか面白くないかの基準はほとんどの場合、総合演出にあります。
2、何を持って優秀とされるか
内容の根幹を担うディレクターは何を持って優秀とされているのか。
それは、【視聴率】【VTRの質】【立ち回り】の3つだと思います。
当然、視聴率が良いとディレクターの評価も上がります。
しかし視聴率が悪くても、VTRの質が良いと”総合演出が判断すれば”評価が上がります。
さらにさらに、視聴率もVTRの質も低くても、立ち回りが上手いと生き残れます。
これを聞くだけでもどれだけ曖昧な基準かが分かるかと思います。
3、クビになる確率
テレビ業界は頻繁にクビ宣告があります。
もちろん会社員が突然解雇されるという事ではありません。
(会社員が所属会社から派遣されているというスタイルが主流)
能力がない、合わない、と総合演出から判断されればクビになる事が多分にあります。
■クビになる確率(経験則)
ディレクター20人中1人が3ヶ月に一回ペースでクビになります。
多いと思いましたか?
もちろん番組によりますが、意外とバンバン切られる印象です。
ヤラセが起きる原因②:一国一城制度
一番組一番組全てに、総合演出が存在します。
番組の代表者は総合演出と言って過言ではありません。
1、慢性的なパワハラ体質
責任が一人に集中しているからこそ、
自分の思い通りにならない場合、パワハラといえる言動をせざるを得ない環境にあると思います。
総合演出の意見は往々にして、王様のような絶対権限を持ちます。
例)・取材対象は、売れない地下アイドル
・その地下アイドルが売れるシンデレラストーリーを描く企画
例えば、こんな企画があったとします。
単純にこのストーリーだけ見せても見たいと思わないですよね。
コレをどう面白く見せるかと会議したとすれば必ず、このアイドルを応援したくなるストーリーはないの?という話になります。
そして、必ずと言っていいほど大したストーリーは無い場合が多い。
すると例えば、
・この子の実家は東北の田舎で、貧乏で昔から苦労してきて家族を養ってあげたい とか
・人が良いのだけが取り柄で、彼氏が皆んなヒモになっちゃう とか
何かしらこの子に感情移入できるストーリーを作ろうとします。
この時に、無理が生じるんですね。
2、過剰演出
業界用語で、”成立してない”という言葉あります。
これは起承転結がない状態を指します。
テレビ番組には必ず起承転結がはっきりした、分かりやすいものが放送されています。#これに頭の良い視聴者は飽きてると思う
裏を返せば、テレビに成立していないものが流れることはありません。
先程の地下アイドルの例えで言うならば、
こんなストーリーがあったら良いな を作る必要があります。
なぜならそれが無ければ成立しないからです。
じゃあ企画ごと変えてしまえばいいと思うかもしれませんが、番組作りはギリギリで進行している場合がほとんどです。なので、走り出したら後に引けず、無理に行った演出が世間に”ヤラセ”として出てしまうのです。
2、取材対象者との信頼関係
それでいうともっと”ヤラセ”は頻繁に起こってもおかしくないはずです。
しかしなぜ表沙汰にならないか、それは取材対象者との信頼関係を作っているからです。
つまり、地下アイドルとの信頼関係を築けている場合は、嘘を真にすることが出来ます。それは両者にとってwin-winである場合のみです。
こういう風に見せたら”おいしい”と相手に納得してもらって始めて実現します。
こういった過度な演出を加える場面は多く、この信頼関係を築けているか否かが最重要ポイントだと思います。
まとめ
総合演出への責任の集中による、慢性的なパワハラ体制が問題でヤラセが起きる場合が多いです。
過剰演出によって起きたズレが世間に出た時にヤラセとなって公になります。
現場のディレクターの責任で終わらせる場合が多くありますが、本質を見ればこの番組作りの体制がそうさせてしまっているのかなと書いていて思いました。
それではまた!